仕組まれた縁組

うるわしい春の宵、オールマックス舞踏会場はいつものようにきらびやかな上流階級の人々でにぎわっていた。
宴もたけなわというとき、会場の入り口がざわめき、一人の紳士が現れた。
第7代ダーレストン伯爵―― 社交界が注目する今年一番の花婿候補だ。
上背があり、このうえなく優雅でハンサム、そのうえ男やもめとくれば、レディたちが放っておくはずがない。
彼はたちまち踊りの輪の中に吸い込まれる。
音楽が流れ、彼は導かれるように令嬢の手を取った……。
ジュリアナは今日も剣を携えて森へ出かけた。
一年前、城主だった父を亡くし、それ以来、男装して領地を守っているのだ。
森は血と陰謀の匂いに満ち、闇夜にまぎれて密偵たちが馬を駆る。
ジュリアナはひづめの音に耳をすまし、さっと身がまえた。
誰かいる。
敵だろうか、味方だろうか? 彼女は部下を引き連れ、人影に近づいた。
月明かりが蒼白の騎士の顔を照らしだした。
シャーウッドの森に月が高く昇るとき、新たな伝説が生まれる。
ハリーは魔の手から逃げるようにロンドンをあとにした。
都会に留まっているかぎり、なんとしても彼を結婚させようという縁結びが好きなご婦人方から逃れられないからだ。
彼は愛馬の手綱を取り、郊外の道を飛ばしていた。
その途中、道の真ん中に大型の馬車が横倒しになっている現場にでくわした。
中に人が閉じこめられている。
急いで助け出そうと扉を開けた瞬間、ハリーはくらくらした。
極上の真珠を思わせるような女性がこちらを見ていたからだ。
看護師のケイトは勤め先の病院を休職して、特別な患者につき添うことになった。
腕に大怪我を負った、別居中の夫リックだ。
一年前に家を出るとき、彼に引き留めてもらえず、ケイトは自分は必要とされていないと思って傷ついた。
今、リックは助けを必要としている。
傷が癒えるまでの期限つきだが、彼の役に立てるのは幸せなことだった。
ところが彼女が家を訪れるなり、リックは冷たく言い放った。
「なんの用だ? とっとと自分の家に帰るんだ」。
ジュリーは図書館で働く、地味で目立たない女性。
これまで男性とつき合ったこともない。
でも、どうしても子どもは欲しい。
その夢を叶えようと、彼女は結婚仲介サービスに入会した。
待ちに待った紹介相手のビデオテープが届くと、映っていたのは素敵な男性タイラー・フォーチュン。
女性に不自由しているとは思えないのに、なぜ? とまどいながらもデートに応じたジュリーは、タイラーにいきなり告げられた。
「この結婚は純粋な取り引きだと考えてくれ」。
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